第2新東京市の駅のホームの上で、碇シンジは混乱の極地にあった。
彼は僅かな着替えの詰まったバッグを両手に抱えさせられたまま、実の父により、その場に置き去りにされたのだ。
初めての経験ではないし、その精神は3歳児のそれではないため、泣き叫ぶようなことはなかったが、間違いなく混乱していた。
(計画は失敗しちゃったの?)
実験の後、母親である碇ユイとは一度も対面していないものの、ユイがエヴァンゲリオン初号機に取り込まれる事態は完全に避けられたという事実を、シンジは綾波レイを通じて知っている。そのため、シンジには自分が捨てられる理由がまるで理解できなかった。
「この一週間どこへ行っていた……。傷心もいい。だが、もうお前一人の体じゃないことを自覚してくれ」
GEHIRN(ゲヒルン)本部内に設えられた広大な所長執務室。その空間で、冬月コウゾウは一週間ぶりに研究所へと現れた碇ゲンドウを問い詰めていた。
「解っている。冬月、今日から新たな計画を推奨する。キール議長には提唱済だ」
「まさかあれを?」
「そうだ、かつて誰もが成し得なかった神への道。人類補完計画だよ」
エヴァンゲリオン初号機への接触実験の失敗の後、被験者となったユイは未だ意識を取り戻していない。一方、ユイの研究室から資料を持ち出したゲンドウは、この一週間、彼女の真意を探り続けていた。
「私もほんの数日前に知ったことですが、ユイは人の姿を持つリリスの化身を生み出すことに成功していました。リリスが我々の手にある以上、もはや、封印を解くことに躊躇する理由はありません。それに、これはユイの望みでもあるのです」
「ユイ君は実験の直前にも『大変危険だ』と言っていたがな……」
「冬月先生。ユイと再び逢うにはこれしか方法がないのですよ」
「きもちわるい」
3歳の誕生日を迎えたその日も、惣流アスカ・ツェッペリンは不機嫌だった。
(14歳にもなっておねしょなんて、一生の不覚だわ!)
その精神年齢は14歳であっても、3歳の乳児に過ぎない肉体の制御はままならない。
「あらあらアスカちゃん。偉いわね」
アスカの母、惣流キョウコ・ツェッペリンは、アスカが泣き出さなかったことを誉めつつ、紙おむつを交換した。
(何が偉いってのよ!)
一方、当のアスカは何を誉められているのか理解できないため、いつまでも不機嫌なままだった。
「ママ、きょうもおしごといそがしいの?」
しかし、ここ数日、キョウコが疲れを隠せないほどに寝不足続きであることを思い出したアスカは、ようやく不機嫌さを隠し、心配そうに尋ねた。
先の本部での実験失敗の報はドイツ第3支部にも届いており、自ら手掛けるエヴァンゲリオン弐号機に掛かる期待が日に日に増しているのをキョウコ自身も感じていた。
(いずれ私も被験者になる。失敗するわけにはいかない)
キョウコはエヴァンゲリオンとの接触実験において、魂が取り込まれることが予め想定されているとまでは知らされていない。そのため、本部での実験データやレポートから失敗の原因を探り出すべく必死だった。
「今日はアスカちゃんのお誕生日ですからね。早く帰ってきますよ」
アスカの父はその場にいなかったが、その夜は母と娘の二人きりでささやかな誕生パーティが開かれた。
「アスカちゃん、お誕生日おめでとう。はい、プレゼントよ」
それはアスカの好きな猿のぬいぐるみだった。
(そういえば、もうシンジのママの実験は終わっているはずね。その失敗のせいでママも大変なのか)
不意に最近のキョウコの疲労の原因を悟ったアスカは、プレゼントのぬいぐるみを見て呟いた。
「どうしてるのかな? ばかしんじ」
「ばかしんじって何かしら?」
「えっ? このおさるのなまえよ! ばかしんじってきめたの!」
「あなた。あの子何だか薄気味悪くありませんか?」
3歳児らしく振る舞えないシンジは、体が小さいせいで一人で済ませることの出来ないトイレなどの手伝いを願う以外では不要な会話などせず、また、出来る限り礼儀正しく、迷惑を掛けないように気を使いながら生活していた。そのおかげで、逆に薄気味悪がられていた――まるで子供らしくないのだ。
「少しくらい我慢しろ。金は十分貰ってる」
「だからって、全く私たちに懐こうとしないし……」
先生夫婦の会話を尻目に、シンジはいつも通りの考え事に耽っていた。
(参ったな。ここに居たら何もできないや。居心地も悪いし……)
引き取られて早数週間。保護者のある3歳児の身の上では好き勝手に遠出をすることなど不可能であり、結果としてシンジは情報に飢え、完全に途方に呉れていた。いくら空を飛ぶなど移動手段に事欠かないとは言え、白昼堂々と空を飛んで移動するわけにもいかず、また、3歳児が夜間に出歩くわけにもいかないのである。
(やっぱりお祖父様に相談すべきかな? でも、どうやって……)
毎日のように同じ悩みを繰り返し考え続けているシンジだった。
ある日、シンジはようやく覚悟を決めた。
(そうだ、京都へ行こう)
夕闇の中、昔いじめられる度に逃げ込んでいた先生の家の裏山へと入り込み、念のため辺りを見回して人気のないことを確認すると、シンジは上空へと舞い上がった。
地球の裏側まで小一時間で移動できるシンジにとり、第2新東京市から京都への移動など鼻唄を歌う時間すら必要としない。
(上から見るとこんな感じだったのか……)
京都市内にある碇本家は碁盤の目の一区画を丸ごと占めるため、土地鑑さえあれば直ぐに発見できる。住み込みの者も含めると数十人が同じ敷地内で生活しており、離れも含めてそれに相応しい規模の和風建築の屋敷ではあるが、それでも尚、周囲を囲む庭の割合の方が遥かに大きい――そんな大邸宅である。
(しまった。どうやったら自分が碇ユイの息子だなんて信じて貰えるんだ?)
シンジは碇本家の上空にまで到達しておきながら、肝心なことを考えておかなかったことにようやく気付いた。
しかし、祖父である碇シンタロウが習慣通りに庭を散策しているのを見つけると、シンジは覚悟を決め、音もなく庭に降り立った。シンタロウは既に60歳を越えているが、それでもシンジの記憶にあるよりも少し若い。シンタロウに関するシンジの最後の記憶は更に10年の歳を経たものなので、それは当然のことであった。
「もしやシンジか?」
目の前に突然降り立つのを見てもシンタロウは全く動揺も見せず、シンジに尋ねた。
「はい」
(全ては流れのままに……か)
シンジにとり、それはまるで与り知らない所での出来事ではあったが、シンタロウの言葉によると、ユイの死亡届が出され、既に葬儀まで済んでいるという。
シンタロウはユイの葬儀をきっかけに自らの孫の存在を知り、その行方を探っていた。それがシンジを一目で認識できたからくりだった。
「そんな! かあさんがしんだなんて、うそだ!」
「実験の失敗だかなんだかしらんが、遺体も残らなかったそうだ」
葬儀に参列したシンタロウは、そう語った。
(え? 遺体がない?)
シンジは自らの頭が急速に頭が冷えていくのを感じた。
「おかしいです。あのじっけんのあとでもかあさんのからだはのこっていたはずです」
「それはどういうことかな?」
シンタロウは姿勢を正し、シンジに尋ねた。
「実験を僕はこの目で見ていました。あの実験は、成功していたら母さんの体がなくなる――本来そういう実験でした」
それは、子供っぽい舌足らずな口調で語られてはいるものの、3歳児の持つ言葉でも内容でもなかった。
結局、シンジは大まかなことについては全て、自らの言葉を尽して語れる限りに語った。
使徒との戦いからサードインパクトに至るまでのこと、一回目の人生で神の力を得たこと、二回目の人生では碇家次期当主として育てられたこと――
話す、話さないというだけでなく、話すべき内容、隠すべき内容といったもの、また話すにしてもいつ話すか、相手により選ぶべきところは無数にあるが、ことシンタロウを相手にするのであれば、今、全てを話すべき――それが、シンジの判断だった。ここでの駆け引きは無用。SEELEやNERVに対抗できる権力を求めることは不可能であるから、シンジが碇本家に求めるのは、せいぜいそれから数年の自らの居場所の提供程度に過ぎない。
「信じられませんよね、こんな話……」
話し終えたシンジは不安そうに付け加えた。
「ふむ。確かに俄かには信じがたい話ではある。しかしなシンジよ――」
いつしか目を瞑り、黙ってシンジの話を聞いていたシンタロウだったが、シンジの最後の言葉に答えた。
「お前が空を飛んできたのを私はこの目で見た。少なくともお前が普通でないことくらいは認識している。それにな、突飛なものを見聞きした時にその真偽を自らで判断する、それくらいのことができんと碇の当主なぞできんよ」
シンタロウが呵々と笑い、「まぁ、少なくともなりは3歳児なのだから、もう眠たかろう」と付け加えると、部屋に侍女が入ってきて、シンジは布団の敷かれた客間へと案内された。
「ヨシノ」
入ってきた侍女を見たシンジは呟いた。
シンタロウにしてみれば、シンジが空を飛ぶような超能力を持っていることは認められても、神であるとまで考えることはできない。シンジが人生を繰り返しているなどというおとぎ話も子供の見た夢と笑い飛ばすべき事柄である。しかし、シンタロウにも唯一人の孫に対する愛着もある上、少々夢見がちである程度のことで、碇本家が求めるシンジの価値が失われることもない。それはシンジが碇本家に居場所を見つける充分な理由であった。
「シンジめ。ヨシノを知っておったか……」
ヨシノはシンジの二度目の人生での乳母のような存在であったが、この人生では初対面である。
(全ておとぎ話と捨て置くわけにもいかんか……)
ある夜、シンジはGEHIRN本部への侵入を果たしていた。
碇本家に引き取られて早一月。自らの生活が落ち着いてくると、シンジは他の仲間の様子が気になり始めた。
両親のいるアスカに関して言えば、気にはなっても特に心配と言うことはなかったが、レイやカヲルの生活のことは不安で仕方がなかった。
『綾波。どこにいるの? 綾波』
シンジは以前と同様に自らのATフィールドを広げ、レイに呼び掛けた。
深夜のことであり、眠りについている方が自然な時刻ではあったが、レイはその呼び掛けに答えた。
『碇……君? 私は……初号機に……居るわ』
レイは未だエヴァンゲリオン初号機に同化したままであった。
シンジは初号機の置かれている第2実験場へと急いだ。深夜のことであり、ジオフロントの施設の建設計画も未だ序盤。GEHIRN本部で研究されている内容が今も昔も重要機密ばかりであることは確かだが、NERV時代に比べると警備など存在しないに等しかった。この時代、未だMAGIのセンサーは存在しない上に、組織の規模も小さいため警備員の数も少ない。
『綾波。何故そこから出ないの?』
シンジは初号機の傍に近寄り、レイに尋ねた。
『私には他に居場所はないもの』
『だからって……』
寂しげなレイの言葉に、シンジは語るべき言葉を持たない。
『ここで待っていれば碇君には逢えるもの』
レイは初号機で10年間シンジを待ち続けるつもりであった。
『寂しくないの?』
『ここにはもう一人の私がいるわ』
『もう一人の綾波?』
シンジはたまらず初号機に同化した。そこには確かにもう一人の存在が感じられたが、それは明確な形を持っていなかった。
『自分の形を知らないの』
人の形はその人のATフィールドが決める。レイの言うもう一人は自らの形をイメージできないため、曖昧なままそこに存在した。
『綾波。ここを出よう』
『私を置いていくわけには行かない……だから、ダメ』
『一緒に出ればいい』
『もう一人の私は自分の形をイメージできないもの……』
『教えて上げればいい』
通常の人間には難しいことだが、シンジたちにしてみれば、自分の形を明確にイメージするだけでエヴァンゲリオンから抜け出すことは容易に実現できる。シンジは今のレイを元に髪と瞳の色を黒に変えたようなイメージをもう一人に与えた。それはちょっとしたいたずらだった。
『あなた、碇君と同じなのね』
『綾波も変えてみる?』
レイの言葉に羨望の色を感じたシンジはレイのイメージする形を包み込んだ。
『私、変わったの?』
鏡があるわけではないためレイは自らの形が変わっていることを認識できないでいた。
シンジは二人のレイを伴って京都に帰り、こっそり抜け出したそのままの自分の部屋に二人を連れ込むと、そのまま朝まで眠りについた。
紅い世界で過ごした数年の経験から、シンジはレイと同じベッドで眠りに就くことに躊躇いはなかった上、もう一人のレイは精神的に余りにも幼かった。
そして翌朝、普段と同じようにシンジを起こしに来たヨシノが三人を発見した。
一晩過ぎたら子供が二人増えていた――となれば、騒ぎになるのは当然である。その上、増えた二人は子供時代のユイに瓜二つと言って良い顔付きだった。
騒ぎが一段落した後、シンジがレイたちと共にシンタロウの元に赴き、二人の正体について全て明かすと、シンタロウはあっさりと二人を受け入れた。元々度量が大きい人間であるし、二人の姿は自分の娘のユイに与えられたものであったのだから、彼にとり、それは自然なことであった。
結局、シンジの知っていたレイはルナ、もう一人のレイはリナの名前を与えられ、二人は双子の姉妹として碇家でシンジたちと共に生活することになった。二人には山岡という姓と戸籍も用意されていたが、山岡がどこの誰なのかについてはシンジたちが知るまでには今暫くの時間が掛かることになる。
これもシンジの知るところではなかったが、シンジにも榊シンジという戸籍が密かに用意されていた。
セカンドインパクト後の混乱は、戸籍という物の信頼性を歪めていた。
この世界で覚醒した後、それ程長くない時を過ごしただけで、その肉体が生まれ育ったSEELEの研究所を抜け出した渚カヲルだったが、彼は相変わらずドイツ国内に生息していた。
キョウコによるエヴァンゲリオン弐号機への接触実験。それに干渉することが、あの紅い世界でアスカがカヲルに依頼した唯一のことだった。
その日、カヲルはGEHIRNドイツ第3支部の実験場に潜り込んでいた。
弐号機への接触実験は順調に進行したが、奇しくも初号機の時のそれと全く同じタイミングで失敗した。もちろんそれは、完全にカヲルの、そして、シンジたちの計画通りの出来事だった。
「アスカちゃん。ママね、捨てられちゃうの」
実験失敗の後、数時間意識を失っていたキョウコの病室に連れられてきたアスカは、その言葉を聞いて悲鳴を上げそうになった。
「もう誰も私を必要としてくれないの」
自分の首を絞めた母、人形を自分と誤認するようになった母、自ら首を吊って命を絶った母――過去のトラウマを掘り返される思いが一瞬アスカの脳裏をよぎった。
しかし――
「ママ、あたしにはママがいるの。それにね……」
アスカは辛抱強くキョウコとの会話を続けた。
アスカの前の人生で精神汚染を受けたキョウコとは違い、このキョウコは溜り続けていた疲労と実験失敗のショックが重なった結果、精神的に不安定になっていただけであったため、やがて落ち着きを取り戻した。
接触実験失敗の数日後、これまで仕事にかこつけてアスカとの触れ合いを疎かにしていたことに気付いたキョウコは、自分の職場であるGEHIRNドイツ第3支部へとアスカを連れてきていた。それはアスカの希望によるものだった。
「ママ! あのこがあたしをよんでるの!」
アスカが指差した先には、赤の巨人、エヴァンゲリオン弐号機があり、アスカが弐号機に近付くと弐号機はその四つの目に一瞬光を宿した。当然のことながら、これはアスカが意識的に弐号機に干渉した結果であり、弐号機に取りつけられた各種センサーの計測データから、後日、その時の弐号機は確かにアスカに反応していたと確認された。
これが、セカンドチルドレン誕生の瞬間だった。
「ふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふーふふん♪」
シンジたちがいつものように碇家の庭で遊んでいると、池の側の石灯籠の上に腰掛け、錦鯉が泳ぐ様を眺めながら鼻唄を歌う灰色髪の少年がいた。
「歌はいいねぇ。歌は心を潤してくれる。リリンの生んだ文化の極だよ。そうは思わないかい? 碇シンジ君」
白昼堂々と碇家の庭に侵入したカヲルがシンジの方へと振り返りながら言った。
「僕の名を?」
「失礼だが、君は自分の立場というものを良く知った方がいい。この世界の創造主にして碇家の次期当主なのだから」
「君は?」
「渚カヲル。シンジ君の第1使徒だよ」
「第1使徒は私。山岡ルナ」
いつかのように、ルナが割り込んだ。
「君は僕と同じだね」
「同じじゃないわ。私の名前は碇君がくれたものだもの」
誇らしげなルナに対し、カヲルは一瞬悔しそうな顔を見せたものの、すぐに笑顔を取り戻した。
「久しぶりだねぇ、シンジ君」
シンジは石灯籠から飛び降りて右手を差し出したカヲルと思わず握手をしたが、それが何故だかとても自然に感じられた。
「カヲル君! どうしてここに?」
「ドイツでやることは全部終わったからね。今の僕は自由なのさ」
「SEELEは大丈夫なの?」
「SEELEにはもう一人の僕がいる。あそこには僕の居場所は最初からないのさ」
シンジたちは場所を部屋の中に移し、互いの近況について語り合った。
この場でただ一人、リナだけは語る言葉を持っておらず、おやつを食べながらカヲルの顔をもの珍しげに見ている。
少なくとも中学生程度までの人生経験を持つ三人と、つい先日までエヴァンゲリオン初号機の中の希薄な魂に過ぎず、言葉という概念すら持たなかったリナでは、現時点で対等な会話を交わすことは出来ない。それでも彼らは可能な限り一緒にいる――それは彼らの持つ絶対的なルールだった。彼ら自身には子育ての経験も兄弟を持った経験もなかったが、レイに関する経験は、それが時の経過により解決される問題に過ぎないことを教えていた。
「ところで、綾波レイ……失礼、今は山岡ルナだったね。それはイメチェンいうわけかい?」
カヲルはルナの髪や瞳の色がレイと異なっていることを話題にした。
「イメチェン? わからない」
文字通り言葉の意味が解らなかったルナに代わってシンジが顛末を語ると、カヲルは納得したという表情で言葉を続けた。
「なるほど、それでその姿と言うわけか。これはかえって都合が良かったか……」
「どういうこと?」
「実はねぇ、GEHIRN本部にはもう一人、ファーストチルドレンの綾波レイがいるはずなんだよ」
カヲルはエヴァンゲリオン弐号機の接触実験への干渉のためにスケジュールを探ったりという目的のため、GEHIRNの持つ情報をかなり正確に掴んでいた。
シンジたちは心底混乱した。その場にいるカヲルに対して、この世界にもう一人の、タブリスたるカヲルが存在するように、レイにも同じような存在がいることに疑問はなかった。そしてシンジとルナは、リナがそういう存在であると信じていた。
「碇君。このイレギュラーの修正、容易ではないわ」
新世紀エヴァンゲリオンは(株)ガイナックスの作品です。