新世紀エヴァンゲリオン

〜せめて人間らしく〜

第一部

第二章 回想


 約束の時。

 綾波レイは、アダムをその右手に宿した碇ゲンドウと共に、ターミナルドグマに磔にされた第二使徒リリスの前に在った。

「アダムは既に私と共に在る。ユイと再び逢うにはこれしかない。アダムとリリス、禁じられた融合だけだ。時間がない。ATフィールドがお前の形を保てなくなる。始めるぞ、レイ。ATフィールド――心の壁を解き放て。欠けた心の補完――不要な躰を捨て、全ての魂を、今、一つに。そして、ユイの元へ行こう」

ぽとっ

 ゲンドウの言葉を受け、ATフィールドを解き放ったレイの左腕が重力に逆らえずその場に落ち、それを確認したゲンドウは、自らの右手に宿したアダムをレイの右胸に差し込むと、更にアダムをレイの子宮へと移動させた。

「うっ」

 レイはただその苦痛に耐えていた。

 リリスの卵たる黒き月、ジオフロントに振動が伝わると、ゲンドウは自らの唯一の希望をレイに託した。

「事が始まったようだ。さあ、レイ。私をユイの所に導いてくれ」

 しかし、レイがゲンドウとの融合を拒絶したかのように、ゲンドウの右手は切り放され、その直後には、失われたはずのレイの左腕部分が泡立つように膨れ上がり、そして、完全に復元された。

「まさか!」

「私はあなたの人形じゃない」

「何故だ?」

「私はあなたじゃ……ないもの」

 レイはその身を空中に浮かべると、磔にされたリリスの胸元へと自らの躰を運んだ。

「頼む。待ってくれ、レイ」

「ダメ、碇君が呼んでる」

「レイ!」

「ただいま」の言葉と共に、アダムをその身に宿したレイがリリスの体内に吸収され、ここにアダムとリリスの禁じられた融合は果たされた。

 アダムとリリスとの融合の結果生まれ、綾波レイに良く似た姿をその身に持つ新たなヒトは、上空の、成層圏にまで達しようかというエヴァンゲリオン初号機を目指し、ただひたすらに、その躰の拡大を続けた。

「あの時何故リリスと融合しようと思ったのか、私にはわからないの。碇君に呼ばれてる感じがして、気付いた時にはもう初号機の前だったもの」

 レイはそう述懐した。

「先代の神に与えられた使命を、無意識の内に果たしたということになるのかねぇ」

「僕は、あの大きな綾波が怖かった。でも同じ大きさのカヲル君は怖くなかった。不思議なもんだよね。カヲル君が使徒だったことを知っていたからなのかな……」

「あの時の僕はシンジ君に消して貰った僕とは違うんだよ。アダムより生まれし者の魂はアダムに還る。文字通り、僕の魂はアダムに還っていたのさ。そして、アダムとしての僕がシンジ君に逢うために最も相応しい形として渚カヲルの姿を選んだということだよ」

「魂が還るってどういうことなの?」

「アダムと一つになっていたってことさ。あの時は碇司令とも一つになっていたってことになるのかな。生きていてもアダムとの融合を目指し、肉体が滅びても魂だけはアダムに還って一つになる。正しく、生と死は等価値だったのさ――僕にとってはね。まぁ、生きたまま碇司令との融合を果たすというのはあまり楽しい想像ではないから、あの時、死を選んだ僕の選択は間違っていなかったよ」

 しみじみといった雰囲気で答を返した渚カヲルであったが、その顔は何時もの涼しげな微笑を湛えたままだった。

「で、この一連の騒ぎってのは、結局、シンジを神にしようと思ってみんな頑張っていたってことなわけ?」

「それは違うのさ。惣流アスカ・ラングレー君。少なくともSEELEの老人たちは神を造り出そうなどとは考えていなかった」

「何であんたはSEELEなんてやつらの事を知ってるの?」

「僕は彼らによって生み出され、育てられ、そして彼らのシナリオ通りに死んだモノだからね。彼らのシナリオでは、新たな神が造り出される予定ではなかったのさ」

「それじゃあ、そもそも何でセカンドインパクトなんて起こしたのよ」

「案外、裏死海文書の南極での災害の発生方法だけを信じて、その隙に権力を握ろうという目算だけで動いていた――最初はそんなものだったのかもしれないね。新たな神の生誕なんて荒唐無稽な話の割に、南極のアダムへの干渉の仕方なんかの記述が具体的すぎたのかもしれない」

「あるいは、試練が本当に始まるなんて事は信じていなかったにも関わらず、裏死海文書の記述通りに事が進んでしまった。おかげで老人たちは自分たちの望まない新たな神の生誕を阻止する必要に駆られたのか……」

「それなら、別にNERV本部に攻め込んだりする必要ないじゃない」

「碇司令の元に必要な鍵が全て揃っていたことは確かなのだから、その目論見を阻止するためには必要だったということかな」

「それじゃ、シンジのパパはシンジを神にしようと思っていたの?」

「あるいは、アダムを身に宿しただけで自分自身がアダムそのものになったつもりでいたのか……全く愚かなことだね。自らが神になるつもりだったのか、エヴァンゲリオン初号機を神にするつもりだったのか、それとも、本当にシンジ君を神にするつもりだったのか……」

「碇司令は、アダムとの融合を果たしたリリスが、その後初号機と融合を目指すことを知っていたのかもしれない。初号機に宿ったユイさんと再び逢うことだけが碇司令の望みだったもの」

「じゃあ、シンジのパパの目的ってのは人類の滅亡と引き替えにシンジのママに逢うってことだったの? 意外にロマンチックなのね」

「人類補完計画。それが老人たちや碇司令のそれぞれが進めていた計画に付けられた名前だよ。全ての人間が心に持つ欠けた部分を、人々を分け隔てるATフィールド――心の壁を強制的に解放させることで一つの魂にまとめあげ、心の隙間を互いに埋め合わせる。果たして計画は成功したと言えるのか……」

「ばっかじゃない! 求め合う心ばかりじゃないってのに。互いに拒絶し合うだけの心だったら一つになったからってハッピーになんてなれるわけないでしょ。どこもかしこもロマンチストばかりだったって事?」

「老人たちも一枚岩と言うわけではなかったから全員が同じ思惑で動いていたとは思えないけれど、人類の行く末に絶望を感じて集団無理心中を図ったか……」

「自分たちの信ずる神が、自らに似せて作ったという最初の人間アダムと自らの形が違うことに気付いたことで、自分たちが神によって創られた人間ではないという事に絶望を感じたのか……」

「原罪から解放するという行為そのものを自ら進めることで、自分が神そのものであるという幻想を見たのか……」

「案外、権力者による集団ヒステリーの結果だったのか……。いずれにせよ、元々神を生み出すための試練と儀式に過ぎなかったわけで、他の計画は全て誤解と思い込みの産物って事だからね……。まぁ、答の出そうにない問題だよ」

 そしてリビングには沈黙が訪れた。

 翌朝、四人は再びリビングに集まっていた。特に誘い合わせていたわけでもないが、彼らにとってみれば、やはりそれが自然であった。

「で、これからどうするつもり? か・み・さ・ま」

 惣流アスカ・ラングレーは茶化すように訊いた。それは、碇シンジが神であることを受け入れることにしたのか、あるいは、未だ信じきれずにいるのか本人にも判然としないような曖昧な態度だった。

「いつまでもここにはいられないから、取り敢えず世界を戻すよ」

「それってどういうこと?」

「もう、この世界には僕たち以外に生きているものはいない。今は偶々電気や水道といったライフラインも辛うじて生き残っているけど、それもいずれ止まる。故障したり燃料が切れたりしてもそれに対処する人がいないからね」

「ふーん、そういうこと」

「それに、人間どころかあらゆる動物、植物すらなくなってしまったこの世界にはもう飽き飽きしてるんだ」

「飽き飽きって、まだたった一日じゃない――ま、確かに、直ぐに飽きそうではあるけどね。でも、どうするっての? 神様らしく天地創造から始めるっての?」

「天地創造はいいねぇ。正しく神だけに許されたロマンの極だよ。そうは思わないかい? 碇シンジ君」

 カヲルは何時もの微笑を浮かべつつ、わずかな頷きを繰り返し、一人何かに納得している様子だった。

「ちょっとは惹かれないこともないんだけどね、時間が掛かるから、今はインチキする」

 シンジはカヲルの方を見遣った後、アスカに向かい直して言った。

「インチキって何?」

「やり直すって事だよ」

「時間を遡るとでも言うの? はんっ! ばっかみたい。そんなことできるわけないでしょ」

「もしかして神ならできるのかもしれないけどね、僕にはそのやり方がわからない。でも確実な方法はあるんだ」

「どういうこと?」

「昨日、薔薇を創って見せたでしょ。あんな感じで過去の世界を丸ごと再現するのさ」

「へっ、そんなことができるの?」

 アスカはまるで信じていない様子で、目を細めシンジの顔を見つめている。

「碇君にとって、初めてではないもの」

「僕らにとって昨日のサードインパクトは三回目なんだ」

 大地。そして、紅い海。

 それだけが全てであったはずのサードインパクトの直後に唯独り生かされたシンジは、紅い海のほとりで膝を抱えていた。

「これが僕らが必死に戦ってきた結果だというの? これが僕の望んだ世界そのもの……」

 人類補完計画を意識的に進めてきた一握りの権力者たちは、サードインパクト後の新たな世界の姿は依り代たるシンジの望む通りの姿を形取るものであるということを信じていた。

 一方、シンジは自らが新たな神となったなどという事を認識していなかったが、全知全能たる神となったことにより、本来彼の知るはずのないことを知っていた。

 その結果、彼は自ら望んで紅い海を創り出したと誤解し、その責任を自らに求め、唯独り、いたずらに自らを責め続けていた。

「結局僕は、人を傷付けることしかできなかったんだ」

「僕が初号機に乗りさえしなければトウジの妹だって怪我しなかったはずだし、トウジがチルドレンになることもなかった。そうすれば片足を失うこともなかったんだ」

「アスカだってそうだ。僕がアスカの側にいなければ、初号機に乗ってさえいなければ、壊れずに済んだんだ。僕にはアスカを傷付けることしかできなかった」

「綾波だって……。綾波だって自爆することなんかなかったんだ。僕が自爆すべきだった」

「それにカヲル君を殺してしまった。やっぱりカヲル君が生き残るべきだったんだ。僕のせいで世界はこんなになってしまった」

 シンジは唯独り、繰り返し繰り返し自らを責める言葉を呟き続け、いつしか直ぐ側にレイとカヲルが現れていることすら認識していなかった。

「シンジ君。僕たちチルドレンは仕組まれた存在だ。今の君は知っているはずだよね――何故、君が初号機に乗ることになったのか」

「僕が、僕が初号機に乗れるのは、僕の母さんが碇ユイだったから……」

「碇君。私があなたに出会った時、あなたが初号機に乗らなかったら人類はあの日に滅亡していたわ。それまで私は初号機にシンクロできたことがなかったもの」

「でも、もっとうまく戦えていたら、トウジの妹だって怪我なんかしなくて済んだんだ。そうすればトウジがチルドレンになることもなかったし、左足を失うこともなかったはずなんだ」

「碇君。あなたは、あの時私が初号機に乗って簡単に使徒を殲滅できていたら――と私を責めているのね」

「フォースチルドレンが――左足を失ったのが鈴原君じゃなかったら、それで良かったのかい?」

「そ、そんな……」

「シンジ君。あの時、見たことも聞いたこともないエヴァに初めて乗せられた君なのに、上手にエヴァを操って使徒を簡単に殲滅できているべきだったと考えているのかい?」

「そんなことないけど……。だからって後悔することも許されないの?」

「シンジ君。ヒトは許される範囲でしか責任を負うことができない。そして、今、君が後悔していることの多くは君の責任の範疇ではない。筋の通らない後悔は悪というものだよ」

「だったら、僕はどうすれば良かったの?」

「碇君。あなたは本当にこのままで良いの?」

「シンジ君。君は本当にこのままで良いのかい?」

「だからって、どうしろっていうのさ!」

「やり直してみたらどうだい?」

「やり直したからって僕に何ができるって言うのさ! 僕は結局バカシンジなんだ。それなら、何もしないほうがいい」

「碇君。これまでのあなたの経験と人との関わりの中で今のあなたは形作られたわ」

「シンジ君。碇家というのは由緒ある家系だったと聞いたことがあるよ。碇家というのは碇ユイ亡き後、後継者がいなかったこともあって没落してしまったそうだけれど、君がお父さんに捨てられた時にお祖父さんに引き取られていたら、君は次期当主として大切に育てられていただろうね。きっと、今の君とは全く違った君になっていたに違いないよ」

「そうじゃなかったんだから、どうしようもないじゃないか!」

「やり直してみたらどうだい?」

「やり直してみればいい」

「そ、そんなことできるの?」

「ほら想像してごらん。捨てられた駅のホームにお祖父さんが迎えに来るところを……」

「そう、強く強く想像するの。お祖父さんに出会うところを……」

「想像する。強く想像する。強く強く想像する……」

「それで次に気付いたら、また紅い海の側にいたよ。独りぼっちでね」

 シンジは昔を懐かしむように、目を閉じて言った。

「ただ、お祖父さんの所で育てられてから父さんに呼び出されて、結局エヴァに乗って戦ってサードインパクトが起こるまでの記憶が付け加えられてた」

「やり直したのに失敗したっての?」

「僕は何も知らなかったから……。それこそ、碇シンジがアスカの知ってるバカシンジじゃなかったらどうなっていたのかっていうのを確認しただけで終わったよ。それでも、終わった後でいろいろとものを考える余裕みたいなのは身に付いたみたいだね」

 シンジは一息吐くと、話を続けた。

「二回目の世界の僕は、最初の僕と違ってものを現実的に考えるってことを知っていたんだ。帝王学っていうのかな? 人を使う術みたいなことを早くから仕込まれてたし。それに、戦いのプロ相手の実戦で通用したとは思えないけど護身術みたいなのも習っていたからね。エヴァに乗った最初から戦う術みたいなものも少しは知っていた」

「ま、バカシンジのままでも使徒は全部倒したんだから、その辺はどうでも良さそうではあるわね……」

「ちょっとした出来事以外では、結局最初の時と変わってないんだ。最初の時より良かったのはトウジの妹の怪我が軽かったことくらいかな。それにしたって、初号機が暴走を始めた場所やタイミングが変ったせいってだけなんだけどね」

「それもサードインパクトが起こったんならチャラだものね……」

「アスカはもっと突っ掛かってきたよ。僕なんて司令の息子にして金持ちのボンボンだもんね」

「うっ、それはありそうね……」

 アスカはシンジから視線を外して呟いた。

「トウジは死んだよ。二回目の僕は最初からパイロットを助けるつもりで参号機と戦っていた。でも、エントリープラグを抜き出そうってところでダミーシステムに切り替えられて、トウジはそのまま初号機に握り潰された……」

「リリンの知恵というのは恐ろしいものだね」

「あれは初号機に乗った僕の手でトウジを傷付けるというシナリオだったのさ。大体、怪我が治っていたトウジの妹が参号機の来る直前になって交通事故に遇ったってのもおかしな話だよ」

「そこまでするの……」

「トウジを殺した後、僕はやっぱり初号機で暴れたんだ。僕が一番初号機を巧く使えるのにってね。それで次の使徒が来た時には、まだ独房にいた」

「何も変らなかったわ。私も弐号機パイロットもあの使徒には手も足も出なかった……」

「それで、独房から引っ張り出されて初号機に乗せられた僕があの使徒を倒したんだけど、やっぱり初号機に溶けたよ」

 まるで何でもないことのように笑って話すシンジを見て、アスカは少し呆れたような顔をして見せた。

「その後もほとんど同じだ。やっぱりアスカは壊れたし、綾波は自爆した」

「シンジ君。少し違うこともあったんじゃないのかい?」

 カヲルは楽しそうに口を挟んだ。

「カヲル君を殺す時は、一回目より躊躇しなかったね。あの時の僕は、使徒とは戦い抜くと、はっきり決意していたから……」

「最後はどうなったの?」

「戦自が攻めてきた時、僕は早くから初号機で待機してた。アスカもやっぱりシンクロできないまま、意識もはっきりしていないままで弐号機に乗せられてた。それで、エヴァシリーズとは突然復活したアスカと僕の二人で戦っているつもりだったんだけど、相手は最初から弐号機だけを相手にしてたみたいでね……」

「あたし、やっぱりやられちゃったんだ」

「弐号機が電池切れで動けなくなったところをエヴァシリーズが蹂躙しているのを見て、僕はかっとなった。我に返った時には、もうロンギヌスの槍が初号機の目の前にあって儀式が始まってた。それから後はサードインパクトさ」

「そっか……」

はっ

 それまで俯いて何かを考え込んでいたようなアスカが突然顔を上げた。

「で、なんであんたたちだけ何回分も記憶があるのよ」

「それは多分、僕らが先代の神の使徒でもありシンジ君の使徒でもあるからだろうねぇ」

「私たちはサードインパクトの後で以前の記憶を思い出したわ。それは碇君も同じだと言っていた」

「最初のやり直しをした時の僕は、自分が嫌で嫌で仕方がなかった。全部なかったことにしたかったんだと思う。大体、自分がやり直しの世界を創造するなんて意識もなかった。だから、全ての記憶が封印されていたんだろうね。サードインパクトの後になって全て思い出したけど……」

「全部忘れて違う人生をやり直したから今のシンジの性格になったってことか。何かようやく納得できたわ」

「そう言えば昨日のが三回目だって言ってたわよね。何でもう一回繰り返したの? しかも、情けないバカシンジの人生をやり直したってことでしょ?」

「それは、これからの僕たちの計画に関係があるんだ」

 四人とも空腹を感じるような躰ではなかったが、既にお昼時となっていたこともあり、シンジは昨夜の残りのチーズケーキと一緒にお茶の準備をしていた。

「二回目のサードインパクトの後、私たちは長いこと三人で暮していたの。それはとてもとても穏やかで気持のいいことだった」

「最初はここみたいなホテルを転々としていたんだけどね、まわりには紅い海しかないし、その内電気なんかも使えなくなるしで、僕たちは結局山に登ることにしたんだ。山でも上の方まで行くとね、水が透明だったんだ。まわりにはやっぱり動物も植物も存在しなくなっていたから、きっと川には最初、紅い水が流れていたんだと思う。それでも時間が経ったせいか透明な水があった。すごくうれしかった」

「何となく、わかる気がするわ……」

「綺麗な水の湧いてる泉を見つけてね、その近くに小屋を創ったんだ。幸い食べなくても生きていける躰だからね、居場所があるだけで落ち着けたんだ」

「その内、碇君は小屋の周りに草木を創って植え始めたの」

「箱庭っていうのかな? 周りに草とか花とかりんごの木とかを植えてみた。ささやかながら神様気分を満喫していたってところだよ。でもりんごの木には花は咲くのに、いつまで経っても実がならないんだ」

「草や花も、枯れたらそれっきりだったねぇ」

「結局、生態系を一から再現しないと意味がないってことに気付くまで何年も掛かったよ」

「神様ってのも面倒なものね……」

「気付いちゃったら急に馬鹿馬鹿しくなってね、それならやり直した方が簡単だってことで計画を立てた。またサードインパクトが起こったら意味がないからね」

「でも失敗したんでしょ?」

「ただ一つの例外を除けば、三回目のサードインパクトはシナリオ通りだったわ」

「たった一つの例外。それが君さ。惣流アスカ・ラングレー君」

「碇君。このイレギュラーの修正、容易ではないわ」

to be continued...



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